32
その出会いから数日が経った。
広い大学内で、偶然すれ違う確率など低いだろう。
娘の名前も聞かなかったのだから尚更だ。
それでも無意識に捜してしまう自分に気付いて戸惑う。
危険だと、近付いてはいけないと思った筈なのに。
そしてある夕方、人のいない中庭で遂にその姿を見付けた。
正確にはあの娘と、もう一人青年がいた。
向かい合って立つ姿に、告白だとすぐに分かった。
間の悪いところに通り掛かってしまったと引き返そうとした時、娘が深く頭を下げた。
そして名残惜しそうにしながらも、青年は背を向け立ち去る。
その後ろ姿をしっかりと見届ける娘の頬には、一筋涙が伝った。
やはり間の悪いところに来てしまったようだ。
そう思って引き返そうとした時、娘がふとこちらを見た。
「…………」
目が合ってしまい、気まずい沈黙が落ちる。
- 183 -
[*前] | [次#]
しおりを挟む
ページ:
Reservoir Amulet