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駆け巡る想い出。
これが走馬灯と呼ばれるものなら、偽の生を歩んで来た自分でも。
少しは意味のある生涯を送れたのかもしれない。
彼女が泣いてくれるのなら。
泣きながら、笑って見送ってくれるなら。
その表情が別れを告げたあの日と重なって、思わず手を伸ばす。
あの日には拭えなかった涙を指に受け、口を開く。
「こちらこそ、有り難うございます。真宵さん」
今ならば、今だから言える。
「僕も、貴女と一時でも共にいられて幸せでした」
まるで美しい夢のように煌めいた一時。
ただ、それがあるだけて。
「それだけで僕は、偽の生を価値あるものだったと思う事が出来ます」
例え傷付けるばかりで、哀しませるばかりで。
何一つ報われない救われない、一時の夢であっても。
確かに、価値のあるものだったと。
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Reservoir Amulet