39
視線を動かし、真宵の後ろに黙って立っている至聖の方を見る。
「……至聖」
「…………」
呼び掛けると、至聖は無言のまま見返して来た。
「僕がいた為に、辛い事もあったでしょう。けれど、もう引け目など感じる必要は無い。僕は至聖を元に出来たのだから」
あまり目立たないけれど。
優しさと気遣いを秘めた瞳へと語り掛ける。
「これからは貴方らしく、胸を張って誇り高く生きて行けば良い」
誰よりも胸を張って、誇り高く。
かけがえの無い人生を、自分らしく。
「…………」
やがて唇を開いた至聖が、何を言ったのか。
聞き取る事は出来なかった。
体が原型を留めず崩れ出す。
どろりと溶け出し、液体となって。
跡形も無く、消えて行く。
けれども、悔いは無い。
彼等が生きていてくれるのならば。
- 190 -
[*前] | [次#]
しおりを挟む
ページ:
Reservoir Amulet