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緊張しながら、自分の隣の部屋のドアをノックする。
夜遅い時間だから躊躇いはあったが、どうしても話さなくてはいけない大切な事がある。
「華原さん、五十嵐だけど。話があるんだ。少しいいかな?」
すると、鍵を外す音がしてドアが開いた。
無視されなかった事にほっとした後、真宵の姿を見て硬直する。
まだ湿っている髪に上気した頬、ふわふわとした生地の服。
どう見ても風呂上りの様子に、我に返った至聖は慌てた。
「わっ、ごめん!」
「構いません。話とは?」
真宵の方は全く気にしていないようで、淡々と促す。
「あ、ええと……。さっきの続きなんだけど」
ドアに添えられた真宵の手が、微かに震えた。
それを誤魔化すように、ドアを更に大きく開く。
「どうぞ。短い話ではないでしょう」
「え……ええ!?上がっていいのかい?」
「いちいち驚かないで下さい。誰かに聞かれたくないから、わざわざいらしたのでしょう?このまま話していたら筒抜けですよ」
確かにその通りだ。
至聖は部屋に入る真宵の後に続きながら、深呼吸をした。
彼女の雰囲気が少し変わったようなのは、きっと気のせいではない。
巧妙に隠された本質に近付く。
この夜の先、また一つ構図は変わる。
そこに、どんな景色が見えるのだろう。
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Reservoir Amulet