13


緊張しながら、自分の隣の部屋のドアをノックする。

夜遅い時間だから躊躇いはあったが、どうしても話さなくてはいけない大切な事がある。

「華原さん、五十嵐だけど。話があるんだ。少しいいかな?」

すると、鍵を外す音がしてドアが開いた。

無視されなかった事にほっとした後、真宵の姿を見て硬直する。

まだ湿っている髪に上気した頬、ふわふわとした生地の服。

どう見ても風呂上りの様子に、我に返った至聖は慌てた。

「わっ、ごめん!」

「構いません。話とは?」

真宵の方は全く気にしていないようで、淡々と促す。

「あ、ええと……。さっきの続きなんだけど」

ドアに添えられた真宵の手が、微かに震えた。

それを誤魔化すように、ドアを更に大きく開く。

「どうぞ。短い話ではないでしょう」

「え……ええ!?上がっていいのかい?」

「いちいち驚かないで下さい。誰かに聞かれたくないから、わざわざいらしたのでしょう?このまま話していたら筒抜けですよ」

確かにその通りだ。

至聖は部屋に入る真宵の後に続きながら、深呼吸をした。

彼女の雰囲気が少し変わったようなのは、きっと気のせいではない。

巧妙に隠された本質に近付く。

この夜の先、また一つ構図は変わる。

そこに、どんな景色が見えるのだろう。





- 89 -






[*前] | [次#]

しおりを挟む


ページ:



Reservoir Amulet