揺らめく海の都市.10


他愛の無い世間話の後、さり気無く続ける。

「春日の書いた論文、読ませてもらったぞ」

サンドイッチを持つ手が止まった。

「……如何でしたか」

妙に大人びた表情と口調を向けられ、軽く息を吐く。

「大物だな、お前。うるさい上が迎え入れた理由が分かった」

舞夜の書いた論文は、この都市で使われているエネルギーについてのものだった。

あれをそのまま都市庁に提出しても、絶賛されるだろう。

「大学を出て都市庁所属の研究員になるっていうエリートコースを突き進めるぞ」

「その割に、先生はあまり嬉しくなさそうですね」

くすりと笑って舞夜は続けた。

「ご心配なさらずとも、自分の進路はよく考えて決めますから」

「……ああ」

それきり黙ったまま、昼食をとる娘の横顔を見詰める。

こうしている分には幼く見えるけれど。

時折、不意に大人びたところを覗かせる。

彼女の瞳に、この都市はどんな風に映っているのだろう。

そして、今の自分は。





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