波のざわめき.06


「後戻りをするつもりなんて、そんな事が許されるなんて始めから思っていません」

誓った、何度も。

例えこの手を罪で穢そうと、自分の全存在を賭けて見付け出し、壊してみせると。

全てをもう一度、正しく廻す為に。

その為なら、手段は選ばない。

もう後戻りなんて出来ない。

「ささやかでも、自分に出来る事をやらなければならない。マイヤ・セレイン・ジェスとして、この都市の開発に携わった者の娘として、出来る事を」

「……それが、お前の正義か」

静かにシズマが尋ねた。

「いいえ。そんな立派なものではありません。きっと、ただの悪足掻きですよ」

「お前がその為に生きるなら、俺に止める事は出来ないだろうな」

シズマは何処か寂しげに笑って言った。

「だが、これだけは覚えておいて欲しい。俺の目的も同じだ。もう一度全てを在るべき場所に戻す。その為に、俺も動いている」

どれだけの罪を背負う事になろうとも。

引き返せない道を歩み続ける。

そこで、張り詰めた空気を払うように海斗がいつもの調子で言った。

「さてと、マイヤちゃん。あれが手に入る所って、この近くかい?」

「あ、はい。こちらです」

歩き出したマイヤの背中を見ながら、要が呟く。

「そうですよね。強くなければ、今こうして笑っている事なんて出来る筈無いですよね」

「ああ、そうだな……」

この細く華奢な背中に、彼女はどれ程のものを背負っているのだろう。

自分が彼女を殺してからの四年間、一体どんな生活を。

そう考えて、自嘲気味に笑う。

無意味だ。

自分なんかの祈りを聞き遂げる神など、いる訳が無いのに。

けれど、そうであったとしても。

後戻りは、もう出来ない。





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