波のざわめき.09
「だが、そのまま使用されてしまった。開発者の意図ではなく」
「開発者は私の父、シベン・ジェクラン・ジェス。それから」
「俺の父、デュラン・ケン・ルシードだ。二人共海外からこの都市の開発に携わり、研究者の一員として都市庁で働いていたんだ」
機械音が、歩く四人を包み込む。
「かなり早い段階で、シードジェスエネルギーの試作品は完成していたんです。本当は完全なものが出来るまで使わない筈だったんですが……」
「今の長官、譲刃猛が未完成のエネルギーを使用する事に最後まで反対していた二人を殺し、この都市の動力源としてしまった」
「だから四年前、私は都市庁に潜入してシードジェスエネルギーを作り出している機械を破壊しようとしました。成功する筈が無い事は分かっていましたが、知ってほしかったから。ただ一人でも真実を知ったなら、きっと私の願いを叶えてくれるだろうと」
マイヤはそこで足を止め、呟くように言った。
「……此処ですね」
「海斗、準備はして来てるか?」
「ああ、当然」
海斗が鞄からガラスの容器を取り出し、素早くシードジェスエネルギーを入れる。
その様子を見ながら、マイヤが尋ねた。
「あの、海斗さん。海斗さんはどうして、都市庁を相手に戦っているんですか?」
「ん、俺かい?」
容器に栓をしながら、海斗が立ち上がる。
「そうだね、どうしてだと思う?」
はぐらかすような答えに、マイヤは慌てて頭を下げた。
「ごめんなさい。理由を聞き出したい訳ではないんです。ただ、誰でも寂しいのは哀しいから」
顔を上げ、そっと微笑む。
「海斗さんも要さんもシズマさんも、何処か寂しい。けれど強くて強過ぎてその寂しさには届かない。分け合えない。だからせめて私に出来る事をしたいんです。いつか少しでも、寂しさを分けてもらえるように」
いつか慰めの一雫が届くように。
せめて今の自分に出来る限りの事を。
少しでも力になれるように。
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