熱.05
やがてマイヤの寝息が聞こえて来ると、起こさないように気を付けながら毛布を掛け直す。
それから、寝顔を見て息をつく。
「……安心してなんて嘘だよな。本当はその逆だ」
低い声で呟きを落とす。
どうしてこんな風に眠れるのか。
こんな自分の側で。
まさか一緒に過ごす時が来るなんて、あの頃は思いもしなかった。
彼女を殺して、殺してしまった後に残ったのは、欠片だけ。
消えない傷と、痛みだけだったのに。
今はこんなにも暖かくて、温かくて。
彼女は本当に何も変わっていない。
真っ直ぐで、純粋で。
自分などは直視出来ない程に。
時々目を逸らさずにはいられない程に眩しい。
「だが、俺は違う……」
もう戻れない位に汚くなってしまった、ひどい人間だ。
彼女とは違う。
だからこそ、今はただ願うだけ。
彼女の中の哀しい夢が、どうか少しでも優しくなるように。
温もりを求めるなら、今はこの手をずっと離さないから。
どうか、哀しみから醒めて。
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Reservoir Amulet