熱.15


部屋の外に出ると、海斗が息をついた。

「要、お前本当に嘘が下手だね。そんなんじゃ浮気は出来ないぜ?」

「僕を君と一緒にしないで下さい。浮気なんて、僕がする訳無いでしょう」

「ふうん。そんな答え方をするって事は、その歳で恋の一つも知らない訳じゃないんだね」

「当たり前です」

広い廊下を歩きながら、海斗が笑って言う。

「堅物のお前でも、可愛い生徒には手を出したくなるんだね」

「何を言っているんですか。彼女はもう、僕の生徒ではないでしょう」

「ま、そうだけど。じゃあ手を出さないのは、別の理由があるからかい?」

「…………」

しばらく黙り込んでから、要は真剣な調子で話し出す。

「どうしてあの二人は一緒にいるのに、時々あんなに寂しそうな瞳をするんでしょうね。愛し合う相手の側にいられるなら、それだけで満たされるものではないのでしょうか」

「やっぱり堅物だね、要は」

海斗は足を止め、廊下に飾ってある花を見た。

毎朝、マイヤが水をあげている花を。

「恋は、そんな単純なものじゃないよ。あの二人の場合、特にね。俺達の知らないところで、求め合う心を留めてる」

その心は、まだ咲かない花のよう。

蕾のまま、固く閉ざして。

「まだ信じてはいないんだね、愛を。愛する事で何かを失うのが、怖いんだね」

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