熱.16


誰にも見せない深いところで。

決して口に出さない深くで。

優しさを、穏やかな瞳を失わずに成長して。

けれどその裏で、どれだけの葛藤があったのだろう。

様々な、時には残酷とも無慈悲とも思える現実を受け止めて思いを巡らせ、自分の中に昇華させて。

でもそれを口にはしないから。

自分達に見えるのは、その結果の今の二人だけだから。

だからこんなに惹かれるのだろうか。

人として、男として。

「しかし、恐れていては大切なものが手に入らない事もありますよ」

「そうだね。例えば恋した相手が輝くばかりに美しい、月から降りた姫だったとしても。彼女が恋を知り、地上を選び生きる可能性だって、絶対無いとは限らない」

美しい花を咲かせる事が出来ないとも限らない。

「こうして現実には有り得ないと思ってしまうような事を想像して楽しむのも、恋する者の特権だね」

「……虚しいだけのような気もしますけどね」

「そう思うかい?マイヤちゃんが咲かせる花は、どれだけ綺麗だと思う?」

いつか愛を信じられた時、咲く花は。

「だから、俺達も力を尽くすんだよ。近くで、美しい花を見ていたいから」

いつか愛を信じてほしいから。

いつか咲く筈の美しい花の為に。

海斗は、明るく笑って続ける。

「それに俺達、マイヤちゃんのことは好きだけど、シズマのことも好きだろ?」

「……ええ。多少、腹立たしい事実ですがね」

だから幸せになってほしい。

それを側で見ていたい。






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