箱船.3


「お前、嘘が下手だな。何か俺に言いたい事があるんじゃないのか」

優しく尋ねられ、戸惑いながらも口にする。

「いえ、本当に何でもないんです。ただ、何となくいつもよりもシズマさんが遠くに感じただけですから」

こんなに近くにいるのに、いつもより遠くに。

いつもより一人に、寂しげに。

「……マイヤ」

シズマはしばらく見詰めてから、そっと微笑んでマイヤの腕を掴んで引き寄せた。

「え、シズマさん……?」

「どうしてだろうな。どうしても、お前には嘘をつけない気がするよ」

心が安らぐ温もりを抱き締めて続ける。

「安心しろ。俺は此処にいる」

今はまだ、此処に。

清らかな彼女の側に。

奪うから、その苦しみを全て。

微笑みを失う事の無いように。

「…………」

マイヤは黙ったまま、そっとシズマの腕を掴んだ。

まだ届かない心の深くの痛みに、いつか慰めを。

まだ遠い安らぎを信じて、今はただそっと。

温もりを分け合いたい。

この腕を伸ばして、貴方を温めたい。








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