箱船.6


「あれ程都市庁に反発していた君が、そんなにあっさり態度を変えるとは驚きましたね」

「悪いな、要。状況は常に変わるんだよ」

鋭い瞳で、海斗が口を開く。

「成程ね。俺達の潜入を都市庁に流したのもお前って事かい?」

「そういう事だな。一度裏切った俺は、ただ戻ると言っても信じてもらえない。やるならこれ位しないとな」

腕を掴んだ手を緩めずにマイヤを見下ろす。

「この都市の創始者の一人、シベン・ジェクラン・ジェスの娘、マイヤ・セレイン・ジェス。彼女を連れて来る事が、俺が都市庁に戻る条件だった」

冷たい瞳が、マイヤを無感情に見る。

「そういう訳で、お前は俺に付き合ってもらうぜ」

「……承知しました」

目を逸らす事無く頷くと、シズマは僅かに目を細める。

「まだ動じないか。……さすがだな」

「シズマ、本当に裏切るんですか」

要が厳しい声で問い質す。

「僕達だけではなく、マイヤさんまで……。本当に裏切るんですか」

「ああ。利用出来るものは何でも使うさ。こいつが側にいたのは好都合だったな」

その言葉に、拳を固めて要が叫ぶ。

「見損ないましたよ、シズマ!大事な女性すら利用するとは」

「要、人が来るよ。このまま大人しく捕まってやるなんて、俺は嫌だね。今は退くしかないだろ」

海斗は冷静に言って、マイヤを見詰める。

「……マイヤちゃん」

「私なら大丈夫です。行って下さい、早く!」

「シズマ!絶対に、君の思い通りにはさせませんよ」

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