箱船.10


どれ位の時が経ったのだろう。

時間を確かめる術も無いまま、抱えた膝に額を付ける。

白いこの部屋に、一人でいるのは辛い。

飲み込まれそうになる、果ての無い絶望。

それでもそれに流されたくはなくて。

流されれば楽になるかもしれない悪夢に負けたくなくて。

必死に縋り付いていた、一筋の。

「マイヤ、無事か?」

気遣わしげに声を掛けられ、はっとして顔を上げる。

「シズマさん……」

見詰める瞳に気付き、シズマが目を伏せる。

「……悪い。俺に無事かどうか訊く権利なんて無いよな」

「いいえ。待っていました、シズマさん」

「そうか。結構、長く待たせたよな。俺も、中々忙しくてな」

「そうでしょうね」

少し疲れて見えるシズマを見上げて続ける。

「一度都市庁を抜けた貴方が再び戻るには、私の身柄だけでは到底足りない。相当の働きが求められるでしょう。ここ数日は、ろくに寝ていないんじゃありませんか?」

「……この期に及んで、俺を気遣うなよ」

呆れたように息をつき、改めてマイヤに目を向ける。

「お前が大人しく捕まってくれたのにも、随分助けられたんだからな」

「お役に立てたのなら、何よりです」

笑顔で言うと、シズマは苦笑を浮かべた。

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