箱船.10
どれ位の時が経ったのだろう。
時間を確かめる術も無いまま、抱えた膝に額を付ける。
白いこの部屋に、一人でいるのは辛い。
飲み込まれそうになる、果ての無い絶望。
それでもそれに流されたくはなくて。
流されれば楽になるかもしれない悪夢に負けたくなくて。
必死に縋り付いていた、一筋の。
「マイヤ、無事か?」
気遣わしげに声を掛けられ、はっとして顔を上げる。
「シズマさん……」
見詰める瞳に気付き、シズマが目を伏せる。
「……悪い。俺に無事かどうか訊く権利なんて無いよな」
「いいえ。待っていました、シズマさん」
「そうか。結構、長く待たせたよな。俺も、中々忙しくてな」
「そうでしょうね」
少し疲れて見えるシズマを見上げて続ける。
「一度都市庁を抜けた貴方が再び戻るには、私の身柄だけでは到底足りない。相当の働きが求められるでしょう。ここ数日は、ろくに寝ていないんじゃありませんか?」
「……この期に及んで、俺を気遣うなよ」
呆れたように息をつき、改めてマイヤに目を向ける。
「お前が大人しく捕まってくれたのにも、随分助けられたんだからな」
「お役に立てたのなら、何よりです」
笑顔で言うと、シズマは苦笑を浮かべた。
- 159 -
[*前] | [次#]
しおりを挟む
表紙へ
ページ:
Reservoir Amulet