箱船.12
マイヤはしばらくシズマを見返した後、不意に悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「シズマさんって、意外と勘が鈍いんですね」
その笑顔のまま、口元に指を立てる。
「何も言っていないのは私も同じですよ」
本当の事を隠して、今もこうして嘘を重ねる。
「だから、内緒です」
一番汚い手を使って罪を重ねる。
今もこうして、貴方の側で。
「……そうか」
やがてシズマもそっと微笑み返して続けた。
「今俺に言えるのは、俺が守りたいものはずっと変わっていないという事だけだ。これから先に何があっても揺らがない、そんな大切なものの為に俺は動いている」
「ええ。そうでしょうね」
「……一つ、お願いを聞いてくれないか」
唐突な言葉に驚きはしたが、すぐに頷く。
「はい。何でしょう」
「そんな即答していいのかよ。とんでもないお願いだったらどうするんだ?」
「それでも、私に出来る事なら叶えたいです」
再び即答すると、シズマはまた少し困ったように笑った。
「じゃあ、お願いだ。目を閉じてくれ」
「……?はい」
不思議に思いながらも、言われるままに目を閉じる。
すると、少しの間の後に髪にシズマの指が差し込まれるのを感じた。
そして、唇に唐突に熱が触れる。
「……っ」
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