箱船.13


柔らかな温もり。

普通に考えるなら、これは。

けれど思考さえ奪うように、身動きさえ封じるように。

髪を乱す手は頭をしっかりと固定し、体にもシズマの腕が回される。

「ん……っ」

口内を侵す熱。

目を開ける事も叶わない程、熱い。

思考がとろけて行く。

全てを奪われる。

シズマの吐息を唇に感じる度、今起こっている事が夢のように。

遥か遠くのように思える。

「…………」

落ちる。

何もかもが遠い。

ただ確かなのは、熱。

狂おしいまでの熱が混ざり合う。

乱暴だと思いたいのに、感じる唇から伝わって来るのは優しさで。

それが今は、哀しい。

どれ程の時が経ったのか。

やがて唇が離れた時、遠い意識の向こうで。

「……悪いな」

そう呟くシズマの声を聞いた気がした。








- 162 -






[*前] | [次#]

しおりを挟む

表紙へ

ページ:



Reservoir Amulet