揺らめく海の都市.17
その時、誰かが舞夜の前に立った。
「失礼。俺の生徒に言いがかりをつけるのは止めて頂けませんか。都市庁長官殿」
「葉月先生……」
鎮真は舞夜を庇うように後ろにやると、臆する事無く二人に対した。
「彼女は列車の中では、ずっと俺の側にいました。勿論不審な事は何もしていません。それに、何の根拠も無く逮捕するのは問題だと思いますが」
「何だね、君は。この私に歯向かうつもりか?」
「…………」
それまで黙っていた司が、ふっと笑みを浮かべる。
「長官。今の段階で彼女を逮捕するのは無理があるでしょう」
たった一言で長官を制し、舞夜に向かって言う。
「迷惑を掛けて悪かったね。では、また」
二人が立ち去ると多くの報道陣もそれに続き、辺りは急に静かになった。
鎮真は息をつき、後ろの舞夜を見た。
「遅くなって悪かったな、春日」
「あ、いいえ。助けて頂いて有り難うございました」
「仮にも教師なんだから当然だろ。だが、何で春日があんな言いがかりをつけられたんだ?」
尋ねられて首を傾げる。
「私にも、よく……。向こうに歩いて行こうとしたら、急に声を掛けられて」
「そうか」
少し考え込んだ鎮真は、調子を変えて言った。
「まあ、奴等の考えなんて理解するのは無理だしな。遅くなったし、そろそろ帰るか。俺の知り合いが、外で車を用意して待ってる」
鎮真はさっさと舞夜の鞄を取り上げて歩き出す。
少し後から続きながら、小さく深呼吸を繰り返す。
気持ちを切り替えなければ。
何事も無かったかのように。
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