夢の終わり.05
「まさか、彼女は都市庁のやり方に反対していた筈だ」
「確かに君に殺される前の彼女はそうだったかもしれない。だがマイヤ・セレイン・ジェスの名を捨てた時から、その願いより君への復讐心の方が上を行った。それは時経つごとに大きくなり、やがて彼女に恐るべき復讐劇のシナリオを描かせた」
言葉は淡々と紡がれる。
残酷な程に。
「何の恨みも抱かない。愛で全てを覆ってくれる。そんな女神のような人間が、本当にいると思ったかい?そんな人間が偶然にも君の側にいて、自分の全てで君を信じる。そんな奇跡的な幸運が本当にあるとでも?」
今もまだ手に残る温もり。
いつも真っ直ぐに自分を見詰める、あの大きな瞳。
さらさらとした髪の感触。
「生徒として君の前に現れて都市庁に狙われたのも、やがて正体を明かして君と行動を共にするのも、全て彼女の計算の内。自らが君の支えとなり、最後の局面で裏切って君から全てを奪い、限りない絶望に落とし込む。それが彼女のシナリオだ」
マイヤが都市庁と通じていたのなら、自分の裏切りを知っていたのにも説明がつく。
分かっている、これは真実だ。
本当の事だから、絶望を与えられる。
司はつまらない嘘を言うような人間ではない。
だからこれは、逃れられない真実だ。
それでも。
『先生に会えて良かったと思います』
『どんな夢も、本当ではありません。どんな夢も……覚めたら終わります』
『他の誰に届かなくても、先生には届いて欲しいと願うんです』
それでも。
「彼女にとっては我々都市庁さえ便利な手駒だったのだろう。しかし、それでも構わない。こうして私に裏切り者を排除する機会を与えてくれたのだから」
司が銃を取り出して構える。
『私は貴方を信じます。何があっても、どんな事が起こっても』
あの言葉が嘘だったとしても。
此処で死ぬ訳には行かない、まだ。
やるべき事をやるまでは。
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