夢の終わり.09


目を上げて視界に入ったガラス製の窓に、固めた拳を突っ込む。

ガラスが割れる音と共に、血が指を伝うのを感じた。

しかしその傷から感じる筈の痛みすら、ぼやけた意識の向こうの微かなものでしかない。

再び唇を噛み、ガラスの破片を握り締める。

行かなくては、どうしても。

この体に残された温もりの記憶も遠いけれど。

それでも忘れられない。

消し去る事など出来ない。

息が止まる程強く与えられた、突然の熱を。

奪う為だけに。

その為だけに此処にいる自分に出来る、あらゆる事を。

全てを賭けて、ただひたすらに。

霞む景色の向こうへ、手を伸ばして呟く。

「……シズマさん」

その名は、罪の証。

今も尚意識を繋ぎ止める為の、ただ一つの鍵。

自分を痛め付ける為に、何度も何度もその名を呼んで。

感じた温もりの切なさを抱いて。

今はただ前へと進む。

さよならを込めて残された優しさを振り払い、前へ。

揺らぐ事など許されない心に炎を纏って。

前へ。








- 173 -






[*前] | [次#]

しおりを挟む

表紙へ

ページ:



Reservoir Amulet