夢の終わり.09
目を上げて視界に入ったガラス製の窓に、固めた拳を突っ込む。
ガラスが割れる音と共に、血が指を伝うのを感じた。
しかしその傷から感じる筈の痛みすら、ぼやけた意識の向こうの微かなものでしかない。
再び唇を噛み、ガラスの破片を握り締める。
行かなくては、どうしても。
この体に残された温もりの記憶も遠いけれど。
それでも忘れられない。
消し去る事など出来ない。
息が止まる程強く与えられた、突然の熱を。
奪う為だけに。
その為だけに此処にいる自分に出来る、あらゆる事を。
全てを賭けて、ただひたすらに。
霞む景色の向こうへ、手を伸ばして呟く。
「……シズマさん」
その名は、罪の証。
今も尚意識を繋ぎ止める為の、ただ一つの鍵。
自分を痛め付ける為に、何度も何度もその名を呼んで。
感じた温もりの切なさを抱いて。
今はただ前へと進む。
さよならを込めて残された優しさを振り払い、前へ。
揺らぐ事など許されない心に炎を纏って。
前へ。
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Reservoir Amulet