プリズム.11
「君は……」
しばらく黙り込んでから、司が低く言う。
「君は、どうしてそんな事が言えるんだ?君を殺したシズマに。君自身を悪としてまで、どうして……」
「司さん?」
「そんな事をしても、君には何も残らないだろう。君は愛する人に憎まれるだけで終わる。そこまでして君は一体何が得られると言うんだ」
その言葉に目を見張り、微笑んで返す。
「本当に似てますね、貴方とシズマさん。勘が鈍いんですから」
笑顔のまま、口元に指を立てて続ける。
「愛を返してもらう事だけが、幸せじゃないですよ」
「…………」
無言のまま厳しい瞳を向けられ、ふっと息をついた。
「私のした事なんて、取るに足りない事です。それに私の願いはきっと、あの人が叶えてくれますから」
「君の裏切りはシズマに話した。もう彼が君の為に動くとは限らない。更に言うなら、堕ちた絶望から戻る事さえ出来ないかもしれないんだ」
そう語る司へ、射るような瞳が向けられる。
「あの人は強い人です。どんな絶望さえも越えて、きっと立ち上がります。自分の中に眠る絶望を越えた人だけが、この都市の理を壊す事が出来るのですから」
「シズマが再び動く時が来るかどうかなんて、誰にも分からないだろう」
「いいえ。私はシズマさんを信じます」
「根拠も無く信じるなど、愚かなだけだ」
すると、穏やかな微笑で提案される。
「じゃあ、賭けてみましょうか」
「何?」
「私は勿論、シズマさんが勝つ方に賭けますよ。貴方は?」
「…………」
黙り込んだまま、強い光を宿した瞳を見返した。
静かな微笑をたたえているが、強い。
信じると言い切るこの娘もまた、強さを秘めている。
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