プリズム.12
傷付いた瞳で、差し伸べた手の向こうへ。
思い出す過去は、痛く熱くこの身を苛む。
「この世界は悪夢ばかり生むと、その手を伸ばす事を止めますか?」
「俺は……」
自分は何と答えたのだろう。
その場限りの言葉では許してくれない大きな瞳を前に。
「……俺は、確かに優しさも知ってる」
しばらく降りた静けさの中で、ふっと響いた言葉にはっとする。
「この世界は、悪夢だけ生み出す訳じゃない。光も確かにある」
今、目の前に立つ少女のように。
絶望の闇に射し込む光も、確かにある。
「だから、まだ諦めたくはない。この世界が好きだから」
まだ諦めたくはない。
彼女のような存在がいる事を知ったから。
「……お前も、そうだろ?」
少女は暖かな瞳で見返し、近付いてそっと手を取った。
「大丈夫です。どんな辛い夢も苦しい夢も……どんな悪夢も、覚めたら終わりです。捕らわれる必要なんてありません」
伝わる温もりが、優しく心を溶かして行く。
「貴方は一人ではありません。私も一緒に戦っています、ずっと。私はいつも、貴方の味方でいます」
ドアの隙間から聞こえて来る声は続いていた。
「シズマとマイヤちゃん。あの子達は、希望です。新たなエネルギーの開発に欠かせないものを、二人は持っている。……辛い思いを、沢山させてしまっているけれど」
「二人には、悪夢を越えて優しい夢に変える力がある」
「それは私達にも力をくれる。とてもありふれて唯一無二の……かけがえのない存在です」
そうだ。
あの頃から自分は、自分達は。
全てを正しく回す為に、救いと希望の為に戦っていた。
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