愛の静寂.05
譲刃猛の執務室で見付けたデータは、念入りに隠されていた。
それはそうだろう。
このデータは彼にとっては忌まわしいもので、自分の考えとは真逆だった筈だから。
それでも破棄する事はせず、長い間隠し持っていたのは。
後ろめたかったのか、罪の意識からか。
それとも自分の正しさを、このデータを作った者に知らしめたかったのか。
どうであれ、これが残っていた事には感謝したい。
以前マイヤが、危険を犯しながらも人前で堂々と自分の理想を語った。
その揺るぎない眼差しを覚えているから。
今はまだ、自分の言葉ではなくても。
此処に眠る、暖かな人達の考えに背を押されて。
マイクに向け、マイヤと自分の両親が遺した言葉を読み上げる。
声が届いているのなら、昔から変わらない考えを示す為に。
そして何よりも自分自身に言い聞かせるように。
今、此処で語ろう。
他の誰よりも聞いて欲しいと願う彼女に、届いているのだろうか。
どうか届いてほしい。
マイヤが語った程に強く迷い無く出来ているかは分からないけれど。
罪人の祈りを込めて。
せめて、いつも隠していた想いを込めて。
今、此処に語ろう。
この静寂の独り舞台に。
『他の誰にも届かなくても、先生には届いてほしいと願うんです』
他の誰よりも聞いて欲しいと願う彼女に、届いているのだろうか。
どうか届いて欲しい。
本当の想いを言葉にはしないまま、こうして愛を捜すから。
彷徨い流離いながら、一つ一つ見付けて行く答えが。
どんな無様に地面を這っても見付ける理想が。
いつか、君へ。
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