愛の静寂.10
彼女は自分などには勿体無い存在だ。
こうして触れる事さえ戸惑いを感じる程に。
「もしもそうなら……嬉しいです」
ふっとマイヤが微笑んだ。
今にも壊してしまいそうに儚くて、柔らかくて。
そっとその白い頬から手を離し、息をついて微笑み返す。
「俺が言うのもおかしいかもしれないが、お前はやっぱりそうして笑ってた方がいいな」
「シズマさんも、怖い顔よりも今みたいに笑ってくれる方がいいです」
「……そんなに怖かったか?」
「あ、いえ。そういう訳ではなくて」
「あー、コホコホン」
そこで、躊躇いながら司が口を挟む。
「すっかり私の存在を忘れているようだから、敢えて言うぞ。これからどうする?」
「あっ、司さん!先程はどうも。いつの間に此処に来たんですか?」
「……いや、さっきからずっと此処にいたんだが」
軽くショックを受けている様子の司を放ったまま口を開く。
「行くしかないだろうな。この都市の最深部へ」
それから、マイヤの方へ目を向ける。
「マイヤ、お前は」
「私も行きます」
マイヤは被せるように素早く言ってから、さらに続ける。
「何を言われても、毒を盛られても縛られても、私は行きます」
少しでも自分が救いとなれていたのなら、側にいる。
もう、つらい時に離れたりしない。
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