愛の静寂.11


「……全くお前は、いつも俺の予想を裏切るよな」

溜息混じりに言うと、マイヤは微笑んだ。

「計算通りに行かないのが人間ですよ」

「それもそうか」

だからこんなにも掻き乱されて、予想出来ない幸せをくれる。

マイヤの方へ手を伸ばし、軽い口調で告げる。

「じゃあ、一緒に行って一緒に帰るか」

「はい」

手を取り合って歩き出す二人の様子に、司はそっと笑みを浮かべた。

もしかしたら、あるのかもしれない。

『愛を返してもらう事だけが、幸せじゃないですよ』

人間の汚さも犯した罪も、全てを包む無償の愛。

愚かで無価値に思えるそれは、時として人の心に他のどんなものより強く届くから。

少しだけ羨ましく思ってしまうのは何故だろう。

そんなものはいらないと切り捨てて来たのに。

そんなものはある筈無いと閉ざして来たのに。

『シズマさんのことが、大切だから』

あの時流れた涙に嘘は無い。

だから、あるのかもしれない。

無償の愛というものも。

愛で全てを覆う女神のような存在がいるのかもしれない。

本当に。









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