愛の静寂.12


奥へ奥へと進む程、周囲は鉄骨がむき出しになった冷たい雰囲気をしていた。

シズマとマイヤは強く手を握り合ったまま歩いている。

「……何も変わっていませんね、此処は」

呟くように言うと、シズマも低い声で返す。

「ああ」

シズマの手に力が込もるのを感じて、その横顔を見上げる。

「お前、言ってたよな。知ってほしかったと。『ただ一人でも真実を知ったなら、きっと私の願いを叶えてくれるだろう人に』。その為に全てを賭けて、命を捨てる覚悟で都市庁に潜入し、最深部を破壊しようとしたと」

「あ、はい。言いましたけど……?」

二人の後ろから遅れて歩きながら、司は僅かに目を細めた。

どうして今、そんな事を。

「俺は、知ってたんだ」

「え?」

海のように深い色の瞳が、こちらを真っ直ぐに見据える。

「知っていたんだ、俺は。お前を殺す前から、この都市の真実を」

振動が、足元から伝わって来る。

その中で、立ち止まって見詰め合う。

少し離れた場所で、晃がその様子を見守っている。

「知っていて、何もしようとしなかったんだ。お前が全存在を賭けて俺に託すまで」

「どうして……」

「憎かったからだ」

言葉は淡々と紡がれる、けれど。

「都市庁に勤めて間も無い頃、俺は許可無く最深部に入った事があった。本当は確かめたかっただけだった。長官をはじめ、上野者が最深部にあるこの都市の動力源の事を頑なに隠すのは、都市を思ってだと。しかし真実は違った。俺はそこで見た事に絶望し、恐れ憎んだ」

振動と共に聞こえる機械音が、周囲を包み込む。

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