愛の静寂.16
怪我をした手を包むように握り、しばらく黙って足を進める。
「あ、あの、シズマさん……?」
少しして声をかけると、シズマは息をついてから言った。
「都市庁長官、譲刃猛はどうなった?」
「……司さんによって」
そこで言葉を探して口をつぐむと、全て察したような頷きが返って来る。
「そうか。……悪いな」
「え?」
「そんな場面を目撃させて。お前は誰の苦しみも自分のものにしようとするだろう。そんなお前だから、もうこれ以上つらい思いをしてほしくなくて……。俺はお前を傷付けないと決めるのに、いつも上手く行かない。俺はお前を傷付けてばかりだ」
「違います。本当に泣きたいのは、つらいのは貴方でしょう」
そっと身を寄せて続ける。
「シズマさんは知らないんですね。私がどれ程貴方に助けられたか」
ひたすらに自分を責める言葉が。
泣きたくなる程、痛くて。
悲しい程に、胸が痛んで。
泣かないで。
泣かないで、もう大丈夫だから。
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Reservoir Amulet