風の示す場所へ.6


夜も遅いこの時間、食堂には他に誰もいない。

会話の合間にはキーボードを叩く音だけが大きく響いて、夜の静けさを感じさせる。

しかし開いたままの窓から、風に乗って不意に違う声が聞こえて来た。

何を話しているのかは分からないが、誰の声かは分かる。

海斗が手を止め、微笑んで呟く。

「……本当、しょうがないね」

「これは、シズマとマイヤさんの声か」

「二人でいる時、本当に幸せそうですから。良かったですね」

その様子を見ているだけで、嬉しくなるから。

長い間苦しんで来た事を知っているから、尚更。

嬉しくなる。

愛を信じて咲いた花。

健気で儚くて、静かだけれど凛として強い。

願うから、どうか。

ようやく咲いたこの花が散る事の無いように。

見守るから、ずっと。

あの二人が、戦って戦って。

ようやく掴んだ穏やかな幸福が続くように。

皆に平安をもたらした二人が、今度こそ離れる事無く共にいられるように。

二人が歩む道の先に、例えどんな苦難や困難があっても。

一緒なら笑顔が陰ることは無いだろうから。

祈り続ける、ずっと。









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