狂った針が時の記憶を刻む.04


物理学科の校舎に入る所で、静真の姿を見付けた。

「葉月先生。おはようございます」

「ああ、春日か。おはよう。昨日は大変だったな」

労わった後、じっと舞夜を見詰めて続ける。

「早速、何かあったか?」

「え、あの……」

「一応、海斗を護衛に付けたんだが、役に立たなかったか」

「そ、そんな事ありません。ちゃんと助けて下さいました」

慌てて答えると、静真は笑みを浮かべた。

「それならいい。お前みたいに素直な奴は、ただでさえ狙われ易いんだから、気を付けろよ」

「はい。私のことを気に掛けて下さって有り難うございます」

真っ直ぐに見上げる大きな瞳は、明るい光をたたえて。

「本当は私、この都市へ来るのが少し不安だったんです。でも先生みたいな方がいて下さるから、心強いです。ですから、先生に会えて良かったと思います」

軽く頭を下げて舞夜が校舎に入って行っても、静真はしばらく立ち尽くしていた。

あの娘の瞳は、声は、過ぎた筈の時に触れかけて来る。

真っ直ぐな瞳に、全てを見透かされているようで。

自分の中の汚さも愚かさも、全てを見抜かれているようで。

彼女の瞳に、今の自分はどう映っているのだろう。

可能の心に、今の自分はどのように現れているのだろう。

こればかりは、どうやっても知る事は出来ないけれど。

考えずにはいられなくなる。

どうしても。





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