狂った針が時の記憶を刻む.13


長い階段を下りて校門を出た所で、舞夜は足を止めた。

校門の前に、黒塗りの車が停まっている。

(あの車……)

目を細めた時、車から一人の青年が降りて近付いて来た。

「君が春日舞夜さんだね」

名を呼ばれて相手を見返す。

「春日舞夜さんで間違い無いだろう?」

昨日会ったばかりだ。

こちらも覚えている。

「……はい。貴方は都市庁の秘書官さんですね?」

「譲刃【ゆずりは】司だ。少し君に用があってね」

「私に?どういったご用件でしょうか」

司は射上げる舞夜の視線を、笑みを浮かべて受け止めた。

「私の部下が君を危険な目に遭わせたと耳に挟んだものだから。申し訳なかった。今後そのような事が無いよう、私からも注意しておいた」

「……有り難うございます」

「どの組織にも愚か者はいる。しかし、私は決して君を害するような事はしたくない。君の敵ではない。昨日あんな事があったばかりだから信じ難いとは思うが、どうか信じてほしい」

「…………」

舞夜が何も言わずにいると、司は軽く息を吐いて再び口を開いた。

「そういえば怪我の具合はどうかな?痕が残っていないと良いが」

「何の事でしょうか。私、今朝は怪我なんてしていませんけど」

「……なら良い。女の子だし痕が残るような怪我なんて嫌だろうからね。それでは、また」

司を乗せた車が走り去ると、辺りは急に静かになった。

その場に立ち尽くしたまま、自分の左腕に手を当てる。

捨て去った筈の過去から、強く呼ばれているようで。

知らない筈の痛みが疼く。

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