崩れ出す砂の城.10
ゆっくりと飲み下してから、思い出したように口を開く。
「あ、そうそう。さっき校門の所で女神に会ったよ」
「……何ですか、それは」
海斗の言葉に、要が怪訝な顔をする。
「春日のことか?」
「察しが良いね、鎮真は。あの娘が出るっていうだけで、発表会が楽しみになるよ」
「発表会は生徒の努力の成果を知る為にあるんですよ。不純な動機で見に来ないで下さい」
「いいだろ、別に。舞夜ちゃんのおかげで見に行く気になったんだし」
鎮真は自分の額に手を当てて呟く。
「まあ確かに、色々気になる娘ではあるな」
「鎮真。仮にも教師の君まで何ですか」
「こいつに教師らしさを求める方が間違ってるよ」
「人聞きの悪い事を言うんじゃねえ。俺は変な意味で言った訳じゃないぞ」
『どんな夢も、本当ではありません』
あの時、体温と言葉を通じて流れ込んで来たものは。
それは決して優しいものばかりではなくて、何処か静かに泣いているようにも思えたのに。
その暖かさは確かに、どんな夢も掻き消す程強いと感じたから。
時々、怖くなる。
彼女が自分の心の奥まで見通しているようで。
いつか、全てをさらけ出してしまいそうで。
そしてそれを、彼女はあの瞳で受け止めてくれるのではないかと錯覚してしまう。
こんな筈では無かったのに。
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