ただ一つ確かなもの.03
その時突然ドアが開いて、前に立っていた舞夜を直撃した。
「……っ」
「春日!?悪い、大丈夫か!?」
「いえ、私こそ……。少し考え事をしていたので」
鎮真はいつかのように舞夜の前髪のに触れ、額が赤くなっていないか確かめながら訪ねる。
「ドアの前で考え事か?何か俺に用事か?」
「い、いえ!ただ、先生はお元気かなと」
「今日、授業で会ったよな?」
「そ、そうなんですけど……」
口ごもる舞夜をしばらく見詰めた後、鎮真はふっと笑みを浮かべた。
「ま、丁度良かった。俺も春日に用があったからな」
「私に?何でしょうか」
「ほら、発表会はもうすぐだろ。お前のことだから、かなり根を詰めてるだろうと思ってな」
「……はあ」
話が読めずに曖昧に頷く。
「春日、今度の休日は空いてるか」
「はい。その日はバイトもありませんし」
「じゃあ、一緒に出掛けるか。たまには息抜きも必要だしな」
随分唐突に思える提案に、目を瞬いて鎮真を見上げる。
そして、その瞳の色に全てを理解したような気がした。
ああ、そういう事か。
微笑んで頷きを返す。
「はい、分かりました」
ああ、きっとこの人も感じ取っているのだ。
だからこそ、こうして誘ってくれている。
今は笑顔で応えよう。
いつか来る、その時の為に。
- 54 -
[*前] | [次#]
しおりを挟む
表紙へ
ページ:
Reservoir Amulet