ただ一つ確かなもの.03


その時突然ドアが開いて、前に立っていた舞夜を直撃した。

「……っ」

「春日!?悪い、大丈夫か!?」

「いえ、私こそ……。少し考え事をしていたので」

鎮真はいつかのように舞夜の前髪のに触れ、額が赤くなっていないか確かめながら訪ねる。

「ドアの前で考え事か?何か俺に用事か?」

「い、いえ!ただ、先生はお元気かなと」

「今日、授業で会ったよな?」

「そ、そうなんですけど……」

口ごもる舞夜をしばらく見詰めた後、鎮真はふっと笑みを浮かべた。

「ま、丁度良かった。俺も春日に用があったからな」

「私に?何でしょうか」

「ほら、発表会はもうすぐだろ。お前のことだから、かなり根を詰めてるだろうと思ってな」

「……はあ」

話が読めずに曖昧に頷く。

「春日、今度の休日は空いてるか」

「はい。その日はバイトもありませんし」

「じゃあ、一緒に出掛けるか。たまには息抜きも必要だしな」

随分唐突に思える提案に、目を瞬いて鎮真を見上げる。

そして、その瞳の色に全てを理解したような気がした。

ああ、そういう事か。

微笑んで頷きを返す。

「はい、分かりました」

ああ、きっとこの人も感じ取っているのだ。

だからこそ、こうして誘ってくれている。

今は笑顔で応えよう。

いつか来る、その時の為に。





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