ただ一つ確かなもの.05


美術館から出た後、二人はデパートの中を歩いていた。

「格好良かったですね、刀!」

舞夜はまだ興奮覚めやらぬ様子である。

「本当は大きな模造刀が買えたら良かったんですけど」

「いや、それはさすがに持って帰るの大変だろ」

「でも、このストラップも充分格好良いですね」

お土産に買った刀のストラップを手に、舞夜は満足気だ。

「そうだな。そんなに歓んでくれたなら良かったよ」

どうしてか成り行きで鎮真も同じ物を買ったのだが、ストラップは確かにリアルな出来だった。

何かに付ける気にはなれないが。

「付けて下さいね、先生!」

「……う」

心を読んだように念を押され、暫し言葉に詰まってから言う。

「だが、教師と生徒が同じストラップを付けるってのはまずいだろ」

「……そうですね。でも勿体無いです。こんなに格好良いのに」

しゅんとした舞夜を見かねて、慌てて付け足す。

「だがまあ、そうだな。何処か人に見えにくい所に付けてみるか」

「本当ですか!」

嬉しそうな笑顔を見て、ほっとする。

完全に流されている。

流されているが、どうしてか不快ではない。

優等生である舞夜の、意外な一面を知る事が出来ているからだろうか。

「じゃあ、そろそろ食事にするか」

「はい、そうですね」

上の階にあるレストランに向かいながら、一人ふっと息をつく。

教師と生徒としては、こんな時間を過ごすのは良くないかもしれない。

けれど、今こうしなければきっと悔やむと思った。

それは彼女も同じだろう。

だから今を精一杯楽しんでくれている。

分かっているのに、錯覚しそうになる。

ああ、これが覚めない夢ならば。





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Reservoir Amulet