ただ一つ確かなもの.06


食事を終え、街中を歩く。

映画を観たり喫茶店で休憩したりしながら色々な店を見て回る内に、気付けば空は夕焼けに染まっていた。

人工の空、全てコンピューターで制御されている空も、夕焼けは美しい。

駅へ向かいながら、舞夜がぽつりと呟いた。

「あの、先生。今日は有り難うございました」

そう言ってから、首を振って言い直す。

「いえ、今回だけじゃないですよね。いつも、本当に有り難うございます」

「礼を言われる事じゃない。少しは息抜きになったか?」

「はい。とても」

それきり会話が途切れ、二人は黙ったまま歩いた。

目を伏せて、小さく息をつく。

もうすぐ今日が終わってしまう。

このまま時が止まれば良いのに。

そうすれば、ずっと今のままで。

許される筈の無い事でも、思わずにはいられない。

いつか終わると分かっているから、尚更尊く思えるのだろうか。

この穏やかな時間が。





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