夢の終わり.03


「どうしてなのか、私にも分かりません。でも、誰よりも聞いてほしいと思うのは先生なんです」

真っ直ぐな瞳が、強い光を宿して見詰めて来る。

「他の誰に届かなくても、先生には届いてほしいと願うんです。だから私は、レポートを発表するんです。他の何の為でもありません」

「……どうしてだ?」

先程と同じ質問をもう一度すると、舞夜は微笑んだ。

「どうしてでしょうね。でもきっと、私が此処にいる理由がそこに在るからですよ」

その瞳が寂しい光をたたえて揺れる。

「どんなに迷っても、私はきっとそこへ還り着くから。だからきっと此処にいるのでしょう」

例えどんなに哀しくとも。

還るのは、いつも貴方の側へ。

いつも願っている。

あの日捨て去った想い出へ。

自分自身へ二度と戻れなくとも。

それでも貴方のことだけは、いつも。

「……そうか」

鎮真は短くそれだけ言うと、身を屈めて舞夜の瞳を覗き込んだ。

「心配しなくても、お前の言葉はちゃんと聞く」

その顔に浮かぶのは、優しくて哀しい微笑。

奥深く沈めた感情を読ませない、底の見えない笑み。

「逃げたりしないで、ちゃんと聞く。だから安心しろ」

互いの真意を探るように、吐息が掛かる程に顔が近付く。

「明日、楽しみにしてるよ」

それ以上、二人は何も言わなかった。

話す事など、何も残ってはいなかった。

ただ、どうしようもなくやるせなくて。

悲しくなるだけで。





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