夢の終わり.11
「先生。先生も同じですよ」
不意に舞夜が言った。
いつもと変わらない調子で続ける。
「先生も、もっと広い所が似合いますよ。こんな箱船の中ではなくて、高い所から見渡すような、世界がそこから始まるような」
静かな夜に、感じるのは二人の温もりだけ。
痛みだけ。
「だから、きっと貴方と私は何も変わらない。私は選んで此処にいます。貴方は?」
問い掛けに、少し体を離して大きな瞳を見詰める。
「そうだな。俺も自分で決めて此処にいる」
何処までも澄んだ瞳に語り掛ける。
「俺は逃げも隠れもしない。あの頃のまま、いつまでもお前を待ってるよ」
あの頃のまま、本当の自分になって。
いつまでも、今度こそ目を逸らさずに。
舞夜はしばらく何も言わずに鎮真を見上げていたが、やがて傍らに置いていた自分の荷物を取り上げた。
「では私は、そろそろ帰りますね」
「一人で大丈夫か?下はまだ騒がしいかもしれないぞ」
「私の心配は不要ですよ。ではさようなら、葉月先生」
深く頭を下げた舞夜に、笑顔で返す。
「ああ。さようなら、春日」
立ち去る背中を見送って屋上のドアが閉まると、鎮真はそっと目を伏せた。
いつか来ると分かっていたのに、どうしてこんなにも切なさが込み上げるのだろう。
こうして迷いが生まれるのが、人の弱さであり強さでもあるのか。
全てを凍り付かせれば、いっそ楽にもなれるのに。
押し寄せる静寂が、どうしようもなく胸を締め付ける。
深く息を吐き、低く呟く。
「……これで、終わりか」
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