記憶の海.06
「お久し振りですね、シズマさん」
不意に声を掛けられて、静かに微笑む。
「ああ。四年振りだな、お前と会うのは」
そう言って振り向くと、そこに彼女が立っていた。
潮風に、淡い色の髪が揺れている。
目が合うと黙ったまま深く一度頭を下げ、隣に立って同じように海を眺める。
「またこんな風に話せる時が来るとは思わなかったぞ」
しばらくの沈黙の後でそう言うと、彼女は隣で静かに笑った。
「私もです。……あの日も、今日みたいに晴れていましたね」
「ああ。そうだったな」
強い風が二人の間を吹き抜け、目が合った。
海のように澄んだ色の大きな瞳が、自分を映す。
「貴方は今も、戦い続けているんですか?」
「……変わってないんだな、お前は。本当に」
閉じていた扉の奥に眠っている想い出。
小さくてささやかで、けれど尊いもの。
切なく胸に刻まれた、傷とは呼べない痛み。
「お前は俺に会いに来たんだろう?お前を殺した俺に」
揺れる長い髪に、手を伸ばしてそっと触れる。
「その為に髪の色を変え、名前も変えて、別人としてこの都市に戻って来たんだろう?マイヤ」
「はい、私は来ました。貴方に会いに」
大きな瞳が、自分を射抜く。
「シズマ・ジェイ・ルシード。私は貴方に会いに来ました」
今度こそ、目を逸らさずに。
何も持たない無力な手を伸ばして、扉の向こうへ。
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