記憶の海.08
「どんな罪を重ねても、選び取った道を戻る事は二度と出来ません。その先に進むしか無い」
「……お前はもう、選んだんだな」
「はい、私は選びました。だから今、此処にいる」
マイヤの大きな瞳が、鋭さを増す。
「私は退くつもりはありません。負けるつもりもありません。目的を果たす為、約束を果たす為、貴方と戦います」
「いいだろう」
前を見据えたまま、司に告げる。
「お前は手を出さないでくれるか。彼女は俺が片付ける」
「分かった。その代わり、確実にやるんだぞ」
司が銃を下ろし、数歩下がる。
それを確認してから、銃を構え直す。
「俺はシズマ・ジェイ・ルシード。この都市を乱す者は排除する」
向き合う二人の指が、ほぼ同時に引き金を引いた。
何発か銃声が響き渡り、やがて静寂が訪れる。
痛い程の静寂。
悪い夢のように、時の流れが遅くなる。
「……ごめんなさい」
弾を受けたマイヤの体が、力無く手すりにもたれ掛かる。
「お前、今……。わざと外したな?」
僅かに肩にかすっただけの、一発だけ。
こちらが受けたのは、それだけだ。
それは最初のマイヤが撃ったもの。
こちらが躊躇わず攻撃を続けるよう、それだけわざと当てたかのように。
思わず歩みより、尋ねる。
「最初からこうするつもりだったのか」
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