記憶の海.08


「どんな罪を重ねても、選び取った道を戻る事は二度と出来ません。その先に進むしか無い」

「……お前はもう、選んだんだな」

「はい、私は選びました。だから今、此処にいる」

マイヤの大きな瞳が、鋭さを増す。

「私は退くつもりはありません。負けるつもりもありません。目的を果たす為、約束を果たす為、貴方と戦います」

「いいだろう」

前を見据えたまま、司に告げる。

「お前は手を出さないでくれるか。彼女は俺が片付ける」

「分かった。その代わり、確実にやるんだぞ」

司が銃を下ろし、数歩下がる。

それを確認してから、銃を構え直す。

「俺はシズマ・ジェイ・ルシード。この都市を乱す者は排除する」

向き合う二人の指が、ほぼ同時に引き金を引いた。

何発か銃声が響き渡り、やがて静寂が訪れる。

痛い程の静寂。

悪い夢のように、時の流れが遅くなる。

「……ごめんなさい」

弾を受けたマイヤの体が、力無く手すりにもたれ掛かる。

「お前、今……。わざと外したな?」

僅かに肩にかすっただけの、一発だけ。

こちらが受けたのは、それだけだ。

それは最初のマイヤが撃ったもの。

こちらが躊躇わず攻撃を続けるよう、それだけわざと当てたかのように。

思わず歩みより、尋ねる。

「最初からこうするつもりだったのか」


- 85 -






[*前] | [次#]

しおりを挟む

表紙へ

ページ:



Reservoir Amulet