記憶の海.13


「それでも、私……」

「マイヤ?」

「……っ」

切なくて苦しくて、胸が痛い。

このまま壊れてしまいそうな位に。

熱いものが込み上げて、止まらない。

止まらない。

シズマはしばらく隣で泣くマイヤを見詰めていたが、やがてハンカチを取り出して差し出す。

「変わらないな、お前は。本当に」

『貴方が寂しいなら、私が代わりに泣きます』

『どんな夢も……覚めたら終わります』

あの時のように。

例え何処でどう過ごしていたとしても。

彼女の言葉は、心の奥深くまで染み渡るから。

「お前といると、調子が狂う」

いつも胸を掻き乱す存在。

だから、願わずにはいられない。

どうか、泣かないで笑っていて。

「シズマさん……?」

マイヤがその瞳を見上げると、シズマは避けるように目を逸らして体の向きを変えた。

「行くぞ」

「え?」

シズマは背中を見せたまま言う。

「あの日、一つ誓った事がある。お前の願いは必ず、どんな事をしてでも叶えてみせると」

歩き出したシズマの後に、少し躊躇ってから続く。

あの日、想いを弔った海に背を向けて。

今もまだ惑い続ける海原に背を向けて。





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