記憶の海.14


シズマに付いてやって来た居住区の一角を占める屋敷の前で、思わず目を丸くする。

「うわあ、大きなお屋敷ですね」

この都市は居住区の面積が限られている為、ほとんどの住民がマンションに住んでいる。

一軒家を見る事自体が珍しいのだ。

「ああ。おかげで部屋数も多くて助かってるな」

言いながら、シズマが大きな門の脇に付いている端末に手をかざす。

指紋認証が済むと、門が自動で開き始める。

「うわあ、地図が無いと迷子になりそうな広さですね」

「安心しろ。ちゃんと用意してある」

軽い冗談のつもりだったのに、真面目に返された。

内心驚きつつ、巨大な屋敷の敷地内に足を踏み入れる。

「まあ、俺は居候させてもらってるだけなんだが」

「え、そうなんですか?」

「ああ。マンションだとどうしても人目が気になるだろう。悪い事は出来ないからな」

「確かにそうですね」

すぐに同意してから、低い声で付け足す。

「幾ら正体を隠していても、何処から気付かれるか分かりませんからね」

「ただでさえ、俺なんかは都市庁に睨まれてるしな。これ以上下手に刺激すると暗殺される」

「シズマさんはもう、都市庁から出たんですよね」

「ああ。都市庁で管理している膨大な個人情報の中からシズマ・ジェイ・ルシードのものを消して、代わりに架空の人間『葉月鎮真』のデータを作った。それで都市庁から完全に俺の存在を無かった事にしたんだ」

それを聞いたマイヤが目を伏せる。

「そうですか……。でも都市庁には貴方の……」

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