一人よりも.06
「……大丈夫ですよ」
しばらくシズマを見詰め返していたマイヤが、やがて口を開いた。
「私はもう、何処にも行きません。ずっとシズマさんの側にいます」
その顔に浮かぶ微笑は、とても柔らかくて暖かくて。
「貴方も私も、今はもう一人ではありません。だから、一人では不可能な事も可能になるでしょう。人の力は強いものですから」
一人ではないと、胸の深くまで訴え掛けて来る。
「……お前は、不思議だな。時々、全てを見透かすような底の見えない瞳をする」
まるで海のように。
その大きな瞳から逃れられない。
不意に何処までも底の見えない瞳で、心の中を見ているような事を言う。
逃れられない。
「シズマさん?」
名を呼ばれて、ふっと我に返る。
「一体お前の瞳に、この都市はどんな風に映っているんだろうな。時々訊きたくなるよ」
「…………」
「ま、綺麗なものばかりじゃないよな。残念な事に」
シズマはそう言って立ち上がる。
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Reservoir Amulet