神立


近くの駐車場に停めてある荷葉の車に乗り込んでから、袋に付いた水滴をハンカチで丁寧に拭う。

いよいよだ。

緊張しながら、運転席の荷葉に声を掛ける。

「あの、賢木さん」

「はい」

あまりに固い声だったせいか、いつもは穏やかな瞳が鋭い光を帯びる。

「どうしました、桔梗さん」

何事かと訊く口調も、いつもより張り詰めている。

「あの……これを」

緊張のあまり手が震えるのをどうにか隠し、袋を差し出す。

「僕にですか?」

「は、はい。気に入って頂けたら嬉しいのですが」

「開けても良いですか?」

驚いた様子の荷葉に頷きを返し、固唾を飲んで見守る。

そして出て来た車の雑誌に、沈黙が流れた。

やはり駄目だっただろうか。

肩を落としかけた時、抑えたような笑い声が聞こえて来た。

顔を上げると、いつもの穏やかなものとは違う笑顔の荷葉と目が合った。

「ああ、すみません。あまりにも必死な様子で切り出されたので、てっきりもう会いたくないとでも言われるのかと」

「そ、そんな事、私が思う訳が無いです!」

「……そうですね。君はきっと、そんな事は思わない」

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