神立
もうとっくに散った筈なのに、視界に紅の葉が入り込んだ気がした。
そうだ、この光景を見た事がある。
はらはらと舞う紅、その下に佇む冷たい眼差しをした人。
そして、見た事も無いような巨大な。
「桔梗さん!」
素早く太刀を抜いた荷葉が、突如現れた巨大な影に斬り掛かる。
白刃が閃くと同時に、影は呆気無く霧散した。
「……?妙に手応えが無いですね」
怪訝そうに自分の手を見た荷葉は、立ち尽くしたまま動けないでいるこちらに目を向ける。
「大丈夫ですか?」
『大丈夫か?』
優しくて穏やかな声と、静かで冷えた声が重なる。
響く、胸の最奥まで。
持っていたままだった傘が手から落ち、強い雨が体を濡らす。
大地に降り注ぐ、天からの雫。
それは涙のように、貴方の頬も濡らす。
触れたくて、知りたくて。
その度にこわくなった。
また知ってしまったら。
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Reservoir Amulet