玉響


低く短く問うと、娘は慌てたように刀を鞘に仕舞って口を開いた。

「あ、私、怪しい者ではありません。初めまして、桔梗と申します」

丁寧に頭を下げられ、僅かに混乱する。

刀を仕舞うと同時に、相手の殺気も鋭さも何処かへ行ってしまったようだ。

これではまるで、本当に。

まだあどけなさの残る、ただの娘だ。

そう思い、まだ用心しながらも太刀を納めた。

すると桔梗と名乗った娘は、ほっとしたように息をついて微笑む。

「危ないところを助けて下さって有り難うございました」

「別に貴女を助けたつもりはない」

そう言い返すと、桔梗は僅かに戸惑ったように目を瞬いた。

しかしそれもほんの少しの間の事で、すぐにまた微笑を浮かべる。

「確かに貴方はいつものように妖魔と戦って倒しただけかもしれませんが、結果として私を助けて下さいましたから」

「…………」

妖魔という存在も、いつも戦っている事まで知っている。

この娘、やはりただ者ではない。

探る視線に気付いているのかいないのか、桔梗は全く警戒していない様子で歩み寄って来た。

「怪我していますよね」

手を伸ばして、そっと左腕に触れながら続ける。

「私、薬草をもっています。手当をしましょう。話はそれからです」

見上げて来る瞳には、心配と気遣いと。

それから労るような慈しむような、涙をこらえているような。

見た目から感じるよりももっと多くを見て来たような。

何とも言えない大人びた光があった。









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Reservoir Amulet