玉響


溜息を吐いた鬼若の視線を追うと、軽やかに衣を翻して駆けて来る娘が見えた。

黄金色の髪に、青い瞳。

美しい娘だが、近くまで来て立ち止まったその表情は怒りに満ちていた。

「聞こえているわよ?しかも私に黙って普通に働いているし!」

「この店の店主と賭けをしたのだが、負けてしまったのだ。故に一日、此処で働かねばならん」

「威張って言わないで!全く相変わらず仕方の無い人ね、ひ……」

「水晶【すいしょう】。ついでだ。お前も手伝え」

こちらの存在を忘れ、二人は盛り上がっている。

今の内にさっさと去ろう。

言い合いをしている二人に気付かれないようにその場を立ち去ろうとしたが、桔梗がふとこちらを見た。

「どちらへ行かれるんですか?」

余計な事を。

思わず舌打ちをしそうになった時、水晶と呼ばれている娘が初めてこちらを見た。

「…………」

青い瞳が驚いたように見開かれ、桔梗と共に立つこちらを見詰める。

それから、笑顔で鬼若に向き直る。

「よくやったわ、ひ……鬼若。さすがね!」

「……お前に褒められると気味が悪いな」

怪訝そうに眉をひそめる鬼若を無視して、水晶はすっと姿勢を正してこちらに礼をした。

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Reservoir Amulet