玉響


置かれた代金を見て、思わず溜息が洩れる。

「私がご馳走するって言ったのに……」

まるで風のように、吹き抜けて一瞬で言ってしまった。

呼び止めた声も届かないまま。

「それなら追い掛けて、返して来たらどう?」

軽やかに言われて、はっとして顔を上げる。

「このままお別れなんて嫌でしょう?」

「放っておいたら一人で無茶をするだろうな、あいつは」

「鬼若がそれを言うの?」

戸惑いがちに二人の顔を見比べる。

「でも私……今日はこの店で働かないと」

「心配いらないわ。私が代わりに働くから」

当然のように返した水晶は、優しく微笑んで続ける。

「追うなら急いだ方が良いわよ」 

「そうだな。あいつは足が速そうだ」

穏やかな笑顔に促されて立ち上がる。

「有り難うございます。私、行って来ます」

「行ってらっしゃい」

「気を付けてな」

手を振る鬼若と水晶に頭を下げて外へ出た。

辺りを見回しても、もう既に荷葉の姿は見えない。

それでも、彼が向かった場所なら分かる。

先程水晶がやって来た方向へと、道を駆け出す。

追い掛けた先に、何が待つかは分からない。

それでも、このまま会わずに後悔するよりは。

今出来る事をやって悔やむ方が、ずっと良い。









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Reservoir Amulet