玉響


振り向く事もせずに歩いて行くと、聞いていた通り道は山へと続いていた。

一瞬立ち止まって様子を確かめてから、木々の間へと足を踏み入れる。

日の光がほとんど射さない為、辺りは昼間でも薄暗い。

湿った空気が頬を撫でる。

この雰囲気ならば、妖魔が出ても不思議は無い。

水晶が話していた滝を、さっさと見付けるべきだろう。

登りが続く道を、息を切らす事も無く歩き続ける。

今のところ、他の誰ともすれ違ってはいない。

もしかしたら怪異の噂を恐れ、遠回りでも山を避ける道を選んでいるのかもしれない。

静まり返った山の中、自分の足音だけがやけに大きく響く。

そうしてどれ位経っただろう。

水の音が聞こえて、はっとして足を止める。

問題の滝が近いのかもしれない。

更に速度を上げ、音のする方へ向かう。

しばらくすると、不意にぽっかりと空間が開けた。

白い糸のように勢い良く流れ落ちる滝と、澄んだ水をたたえる滝壺。

木々の間を抜けて射し込む日の光を受けて散る飛沫。

そして、はらはらと舞う紅の木の葉。

美しく神秘的とも言えるその光景は、先程聞いた話さえも一瞬忘れさせる程だった。



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Reservoir Amulet