玉響


この程度で背後を取れると考えているのなら、甘く見られたものだ。

腰を下ろし、前を向いたままで近付く気配を待ち構える。

近付く程に気配は更に殺され、足音を立てないようにしているのが分かる。

こうなっては、最早普通の旅人では有り得ない。

賊か刺客か。

何にしろ、目的の為ならば手段は選ばない。

充分に近付くのを待って、振り向きざま刀を抜き払う。

空を切る乾いた音の後、軽い手応えがあった。

濃い紫色の細い布が、断ち切られて地面に落ちる。

「…………」

驚いたように見開かれた澄んだ瞳を見詰め、沈黙が降りる。

「……あの。私、怪しい者では」

弁解するように口を開いた娘に、思わず溜息が洩れる。

もう会う事も無いと思っていたのに、どうしてこんな所にいる。

「俺に何か用か」

そうでも無ければわざわざ此処まで来る筈も無いと思い、刀を納めながらそう訪ねる。

桔梗は返事があった事にほっとした様子で笑顔を見せた。

「昼食の代金をお返しに。私、ご馳走すると約束しましたから」

そんな言葉と共に差し出された代金に、相手の顔を睨む。

「本当にそれだけか?」

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Reservoir Amulet