玉響


水の中から現れた、龍のような姿をした妖魔。

太刀を構えて向き合ってからしばらく経つが、いっこうに襲って来る気配を見せない。

これまで戦っていた妖魔とは、何かが違うと感じる。

その目の中に、理性のようなものがある気がする。

「…………」

しばらく妖魔の目を見据えた後、とうとう太刀を下ろした。

もしも妖魔に、何か変化をもたらしているものがあるとするなら。

油断はせずに、意識を失って倒れている娘の方へと一瞬目を向ける。

泣き声が聞こえると言って滝に近付き、渦を巻く水に包まれて。

水を割るように現れた妖魔を見る前に、急に力を無くして地面に倒れた。

けれどそんな彼女を、巨大な龍は襲おうとはしなかった。

もしかしたら、ただ意識を失っているのではなく。

何かをしているのかもしれない。

此処ではない、何処かで。

妖魔から目を離さず、倒れている桔梗の方へ近付く。

地面へ膝をついて、そっと抱き起こす。

それでも、妖魔は動かない。

ただじっと、何かを訴えかけるように待つように見詰めている。

膝の上に抱え上げた桔梗の白い顔に視線を落とし、いつでも動けるように太刀を握り直す。

彼女は今、何を見ているのだろう。










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Reservoir Amulet