玉響


水は冷たく、何処までも澄んで清かった。

下へ向かって潜り続け、目を凝らす。

すると岩と岩の間の僅かな隙間に、何かがあるのに気付いた。

手を伸ばし、それを掴む。

水が浅くなっている所まで泳ぎ、立ち上がって改めて手の中の物を確かめる。

長く水中にあった為か、黒ずんで所々朽ちてしまっている。

けれど元々の形は、まだはっきりと分かった。

僅かに装飾も残っている、女性物の櫛だ。

「荷葉さん!大丈夫ですか?」

桔梗が濡れるのも構わずに駆け寄って来る。

「ああ。これで良いだろうか」

そう言って櫛を差し出すと、桔梗は振り向いて龍に尋ねた。

「これですか?貴方の大切な人の櫛は」

こちらへ頭を伸ばして来る龍に、一瞬体に緊張が走る。

しかし櫛を持つ手を包み込むように、白く小さな手が重ねられた。

「お返しします」

その言葉と同時に櫛が浮き上がり、龍の体に吸い込まれる。

そして、確かな意志の宿る瞳でこちらをじっと見据える。

「……分かりました」

しばらく見詰め返していた桔梗が、真っ直ぐな眼差しを向けて言った。

「眠らせてあげましょう」

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Reservoir Amulet