玉響


その瞳は悲しげで、それでいて強く。

類まれな輝きを秘めていた。

それからは、あっけない程だった。

二人で刀を振るい、突き立て、龍の姿は霧散して消えた。

今は何も無い空間を見詰め、桔梗はじっと立ち尽くしている。

その心にどんな事を思っているのか、横顔からは想像も出来ない。

人ならざる者と会話し、意志を通わせる娘。

長い髪を微かな風に揺らしながら、水辺に佇む様はまるで。

「……冷えて来ましたね」

こちらの思考は、体を震わせて呟いた桔梗に遮られた。

「そういえば荷葉さん、濡れたままでしたね。早く乾かさないと」

てきぱきと火を起こし、側に来るよう促される。

暖かな炎に照らされた瞳に紅の光を宿しながら、桔梗が居住まいを正して頭を下げる。

「有り難うございます、荷葉さん。あの櫛を探して、見付けて下さって」

「別に貴女の為にやった訳ではない」

「そうだとしても、お礼は言いたいです。嬉しかったから」

穏やかな微笑みと共に言われて、眉をひそめて尋ねる。

「何がだ?」

「……知らないのに、信じてくれた事です」

桔梗はそれ以上、何も言わなかった。

そして、こちらも何かを言ったり訊いたりする気にはならなかった。

彼女が何者なのか、疑問には思うけれど。

この静寂を壊したくはないと、何となく感じたからだ。

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