玉響


刀を手に、鋭い瞳を持つ人と向かい合う。

多少刀を振るって来たとはいえ、この人とは根本的に違う。

経験も、背負って来たものも。

圧倒的な差がある。

勝てる筈が無い事は、始めから分かっている。

そして分かっている事を、彼も分かっているだろう。

それでもこうして今、自分と向き合ってくれている。

決して言えないけれど、他にも分かって、知っている事がある。

だから、だからこそ。

もう言葉はいらない。

張り詰めた空気を破るように、地面を蹴って飛び出す。

振り下ろした刃は、力強く受け止められる。

初めて、こんなに近くで。

真正面から、彼と視線がぶつかった。

しかしそれも一瞬で、すぐに刃は弾かれて再び距離が開く。

息をつく暇も無く、素早く駆け出して刀を振り下ろす。

勝てないとしても、諦める事など出来ない。

体力が続く限り、仕掛け続ける。

こうしていれば、少しでも。

自分の気持ちが、彼へと流れるかもしれない。

受け取って欲しいとか、応えて欲しいとか。

そんな事を願っているのではない。

それでも、知っていてくれたら。

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Reservoir Amulet